平成24年 終礼

平成24年12月29日(土) 午前10時30分より 於:厚生棟大会議室


平成24年度 終礼



━第二次安倍政権誕生の年に━

平成24年も残すところ、後2日となりました。

今日29日は土曜出勤日でしたが、午後は半日有給消化に当て、
仕事は午前中で終了となります。

何やら官庁並みの感がしますが、仕事の方はいわゆるお役所仕事ではなく、
確りと片付けて心置きなく、年末年始の休暇に入れることと思います。

今年を振り返って見ますと、皆さんと共に大過なくやってこれたと言うよりも、
いくつか残念な事もありましたが、大変収穫の多かった恵まれた年であったと思います。

社員の皆さんも良く頑張ってくれました。世の中の大勢は決して良くありません。
そのような中で、良いお客様と良い仕事に恵まれ、それに正面から向き合い、
真摯に取り組めた事による成果だと思います。

そのことに大変感謝すると共に、協力してくれた皆さんにお礼を申し上げます。


今月12月16日は、第16回衆議院議員選挙がありました。皆さんご承知の通り、3年前の民主党大勝から、今度は自民党が大勝して政権交替となりましたが、これ程の逆転になるとは、思いもよらずです。

すべてが失政続きの民主党の敗けっぷりも見事でした。
何事も及ばざるは過ぎたるより勝れりともいいます。
過去の自民党の悪い所は直して、自重しつつ思い切った政策の実行を願うばかりです。

安倍政権を見込んで、すでに株価は上がり、円高は是正されつつあります。
経済にも明るさが見えてくると良いですね。私は先ず遅々として進まなかった、
東日本大震災の復興から手始めに、着々と数々の問題を片づけて、
成果を上げて長期政権を目指してほしいと思っています。

国益を見据えて、場合によっては私達におもねることなく、
我慢を強いるようなことでも遠慮なく、理解を求め実行してもらいたいと思います。

私達国民は、つべこべ言わずに協力して行かないと、
この国は駄目になってしまう所まできています。





そのような中で、私達の会社ベルクスでは、第51期決算が、10月にまとまりました

売上げは20億を超え、過去最高の21億にはとどきませんでしたが、
史上2番目の記録を残しました。50期対比でも、11%プラスでした。

そして目標の経常利益率も5%代にのせることができました。
しかし人員では、過去最多の120名となりました。好調な決算を見越して、
8月には皆さんに喜んでもらうことも出来ました。

決算の詳細は11月の社長朝礼で聞いた通りですので、
ここでは大まかな数字といつくかのポイントしか話しません。

前51期上期の売上げは計画通りで、下期は落ちる見込みでしたが、
下期も順調な受注が続いたのです。

目標の上方修正です。フォローの風が吹いて、51期は追い風参考記録です。
実力以上の結果として、自重して掛かる必要があると思います。

現在52期に入って、4半期を過ぎたところですが、今期の売上目標は、
マイナス9%と約1割減の見込みですが、前期比約7%減となっています。

マイナス成長ですが、目下順調といえるでしょう。
売上目標は景気に左右され易くかなり他力本願的なところもありますが、
自助努力も少なからず行っています。

たとえば製造業にとっても必要不可欠な設備投資も、
3年前のリーマンショック以来抑制して、中古機械で間に合わせています。

中古機械で購入しますと、新しい機械の1/3以下のコストで手に入ります。

当たり外れもありますから、できれば新品が良いのに決まっていますが、
今の所、外れはありません。その結果設備償却コストが下がります。
だからといって、何でも中古機械が良い訳ではなく、
NC工作機械のようなものは、最新で最良のものでなくてはらないのです。

それが3年我慢の子で、7月にやっと導入した、
念願の5軸マシニングセンターなのです。

そして何より、この厳しい時代に良い業績を上げることが出来た要因は、
社員の皆さんの、会社方針への理解と協力、大変な時でもゆるがない信頼と、
仕事に対する意欲を持ち続けていてくれるからだと思います。

これからもどうかよろしくお願いします。





一方、家電業界の不振は目を覆うばかりです。
パナソニック、ソニー、シャープといった、日本が誇る世界に冠たる大企業が、
海外との競争に敗れ、経営不振となっています。拠点工場のいくつかが、
閉鎖され、多くの社員がリストラを余儀なくされています。

私達の業界でも、取引先の海外展開での受注減少や、厳しいコストダウンにさらされています。要請に耐えかねて、廃業や倒産となり、工場や設備の売却のための競争入札が行なわれています。

私もそのような状況を把握するため、その下見会に今年も何度か行って見てきました。

前回見たのは、正にソニーの協力工場のプレス屋さんです。
東京都内にありましたその工場は、事業縮小のため、国内工場は閉鎖して、
ものづくりはタイで行い、東京の工場は設備一切を売り払い、
工場も売って別の場所で、営業所だけにするということでした。

又、今月に入って廃業するプレス屋さんは、社員の数は、60人程の会社で、
自動車関連の仕事でしたが、250トントランスファープレス2台を初め、
合計5、6台のトランスファープレスが狭い工場にひしめいていました。
すぐ隣の建屋には単発の大型プレス機が6、7台ライン化されていて、
恐らく250トントランスファープレスでは出来ない大型の部品を作っていたのではないかと思われます。

他にも沢山の機械がありました。いつくか部品が残されていましたが、
見てみると大して精度が要求されるようななのではないと感じました。
きっと取引先の海外展開にともない、空洞化現象の結果、
廃業となったのではないかと思います。

その工場にあった、250トントランスファーの内、
1台をおすすめということでしたので、それ程必要性はなかったのですが、
メカ式のトランスファーユニットは、今はメーカーでは作っていません。
高価なサーボユニットになっています。

作動テストの結果スムースに動くので、我社にも同じ型のプレス機が5台あります。
大分古くなっているので、スペアーにしても良いかと考え、応札することにしました。ダメ元の価格でしたが、何と落札したという知らせです。

それで急遽ピット工事が行なわれることになりました。当たれば安い買い物です。





そのような状況の中、政府は民主党政権下に、中小企業支援法を作り
資金繰りに困っている中小企業に対して、通常なら出来ない貸し出しを、
金融機関に義務付けました。いわゆる延命治療です。

借りたお金は返さなければなりませんが、
返せない企業に貸したのですから戻ってきません。
無理に返させてはならないという法律です。時限立法で来年の3月には切れます。
どうなるのでしょう。普通の人なら返せないお金は借りません。
サラ金から借りるようなものです。悪法です。

そんなものが無ければ、見切りをつけて廃業で済んだものを、
倒産して社会に迷惑をかけることになるのではないかと心配です。

その意味でも、経済再生は最優先課題のひとつです。景気さえ良くなればと考えます。




中古機械屋さんの倉庫は満杯です。ありとあらゆる機械がそろっています。
それを見ただけでも、ものづくりの自然淘汰が進んでいるのを感じます。

その日は社会勉強ということで、製造部の永田チーフを同行しました。

皆さんご承知のように永田チーフは、来年独立開業です。
つくばにある大きな中古機械屋さんの事務所で、
実はこの人は来年プレス屋を開業するのですと紹介したところ、
いやー、廃業する話しばかりの中、良い話を聞いた!確り頑張れ、
年はいくつだ、そうか私は33才で独立した。60才をとっくに過ぎたと思われる、
中古機械のデパートのような、その会社の会長さんは、人生哲学を語り、激励してくれました。事務所を出ると外はすっかり暗くなっていました。


ベルクスの外製協力工場も、毎年のように廃業する話があります。
仕事も多少は少なくなっていることもありますが、廃業の原因は後継者がいないというのが、主たる原因です。
今年廃業した宮島製作所さんも、片腕の弟さんが病気で引退し、
社長本人も高齢といっても、まだ65才なんですが、
元気なうちに好きなことをやりたいということです。余裕の引退宣言です。
後継者もいない中で、働けなくなるまで頑張っても、
返って迷惑を掛けると考えたのでしょうか。

その時宮島さんは20代で、当時はトキワ工業という社名でしたが、
私達の会社のオイルゲージ部門を担当し、織屋を廃業した、
お父さんの木造の工場を引き継いで独立しました。以来来年で40年になります。

20年前には敷地を拡張して、150坪の鉄骨の工場を増築しましたが、
その工場を活用し、ベルクスの分工場として使ってくれないかという話しから、
永田チーフの独立ということになりました。見廻してみると、まだまだそのような外製先があります。

宮島さんの仕事は、約1年掛りで他の元気な外製先に割り振ったのですが、
現在オーバーフロー気味で、一部社内に取り込むことにしたのですが、
この際永田チーフが独立することで、その受け皿になると共に、外製先の様々な問題、特に品質の確保につながれば、ベルクスにとっても有益です。
独立することで、もつともっと苦労することになると思いますが、
その分、やりがいもあると思います。

社名は、株式会社サイプレスと云う新しい外製先です。

今はその準備期間です。開業目標は来年の4月に置いています。
サイプレスとは桧(ひのき)の英名で、オーク株式会社は樫(かし)の木の樫の英名ですが、共に常緑樹です。社名のサイプレス、桧の木のようにスクスクと真直ぐに伸びていってほしいものです。そして立派な後継者を育てることも忘れないことです。
それが社長としての、大きな社会的責任のひとつなのです。

ベルクスの仕事が中心ですが、ベルクス精神をのれん分けしてもらったつもりで頑張って、来年は新たな展開となるよう期待します。






次の話しは、中古機械の話しが多かったので、
新しい機械の話しもしてみたいと思います。

日本工作機械見本市のことです。
ジムトフと云って、世界三大工作機械見本市のひとつです。
ジムトフは日本で、エモショーはヨーロッパです。
もうひとつは、シカゴショーといって、アメリカで同じような、
工作機械見本市が開催されます。今年は日本で開催されました。
この三大ショーの中で主役を務めているのは日本の工作機械メーカーです。

2年に1度のジムトフを見れば、エモショーもシカゴショーも、
ほとんど同じといわれています。
それ程に、日本の工作機械は世界の市場を席巻しています。
独占状態と云って良いくらいです。

広い会場にはたくさんのメーカーが、最新鋭の機械を並べて加工実演をしています。
加工の速度と難しい形状は、年々進化しています。
今や手作りの立体的で芸術作品のようなものまで、
そっくり同じコピーを作ってしまいます。
素人が見ては、どちらが本物か見分けがつかない程です。
ほとんどのメーカーが数値制御のNC機械で、その制御技術を競っています。

ソフト開発競争です。それはあらゆる機械についても同じです。

私などとてもついてゆけないと思いました。
一通り見て置かなければならないという気持ちで見て廻りましたが、
歩いた距離は10km以上あったのではないかと思います。
時間にして6時間、すっかり疲れてしまいました。

決して年のせいではありません。
若い人でも疲れて途中で止めてしまい、バスの中で1時間も休んだ人も何人かいました。

私はバスの帰り時間に合わせてギリギリまで見て、
帰り際に広い通路の一角でビデオテレビの映像が目にとまりました。
見ると職人らしき年配の人が範用旋盤のハンドルを両手で操作しながら、
何かを削っている所です。

目線は削っている物を見ていません。
削っているのは丸いものです。何とそれは砲丸投げの砲丸なのです。

規格は、寸法と重量と重心が物をいう世界でした。
寸法と形状はNC旋盤を使えば雑作はないのですが、問題は重量と重心です。

こればかりはNC工作機械でもどうにもならず、
職人の感性と技がなければ出来ないという話しでした。

先程のビデオ映像で、私はこの人はどこを見て仕事をしているのかと不審に思ったのですが、説明のためのパネルを読んで解ったのです。
なるほど先程の感性と技というのは、ものを削る音を聴き、
匂いを嗅ぎ、握るハンドルから伝わる振動を計算し、
素早く反応するための感性を研ぎ澄ましている状態の目つきなんだと理解した訳です。

ちなみにこの職人の作った砲丸は、オリンピックで金、銀、銅メダルを三大会連続で独占した(=世界の各選手が使用した)有名な人のビデオ映像だったのです。

それを見た私は何故か、ホッとした気持ちで帰りのバスへ戻りました。




私が最後で、バスは直ぐに発車しました。時計を見たらビッタリ予定時刻でした。
バスの中で、もらってきた、たった1枚のパンフレットを改めて見ながら、
凄い会社もあるもんだと思いました。他のパンフレットは荷物になるので、
一切貰いません。

この会社の社長さんと名刺交換して、後日会社訪問させてもらう約束をしてきました。

その会社は安田さんのコーナーの一角にありました。
何と安田と共同開発した、大型の5軸マシニングセンターは展示会終了後に、
その会社に納入することになっていました。

そのブースには、私達の会社オークに導入した同型のYBM Vi40も展示されています。その会社にはすでに導入済で、その機械で加工した、オーム貝をカットした渦巻状の加工サンプルも展示していました。見事なものです。

その会社にはすでに、安田の機械が7台も導入されています。
他の機械もすべて一級のレベルです。
パンフレットにも書いてありますが、
ポリシーは「日本のものづくりを支えるファクトリーモール」。
素材から品質保証までとあります。

自社で作った製品は、「絶対寸法保証の確立」ということで、
測定した品質は「絶対」ですから、お客様といえどもクレームはつけられません。
何故か?

その秘密は民間企業で世界初となる、
ISO17025という、試験所認定取得工場だからなのです。

ドイツが誇るライツ社製の三次元測定機2台の内、
1台は乗用車一台が丸ごと測れるような大型のものです。
他の測定機も世界第1級のものです。

金型における熱処理技術も特許を取得していて、熱処理工場も大変綺麗な工場です。

その会社は名古屋にありますが、材料屋さんなのです。鋼材屋さんですよ!!

但し創業85年の老舗企業です。従業員は130名の会社です。
機械加工屋さんでもなければ金型屋さんでもありません。
敢えて社名は伏せますが、社名からしても確かに材料屋さんなのです
ものづくりに社運(命)をかけて挑戦しているのです

材料屋さんからの変身ですね。そのような会社もあるのです。凄いでしょう。

11月末に早速行ってきました。敷地は1万坪、ベルクスの3倍はあります。
紹介してくれた安田の営業の方と、待ち合わせて約束の時間に訪問したところ、
社長さん以下3名で迎えてくれました。丁寧な会社説明の後、工場を案内していただきました。確かに材料屋さんでした。

最初の3棟の建屋には、鋼材が整然と置かれ、
材料の切断をしたり、6面加工する工作機械もありました。
更には異形材、一般鋼材、非鉄金属から、線材、コイル材までありました。

次の建屋は熱処理工場です。何台もの熱処理の炉が並び、
特許取得の熱処理技術を誇る工場です。良く管理された綺麗な工場でした。

ここまでが従来からの工場で敷地の約半分です。

最近拡張したというその工業団地が、続いて見るお目当ての工作機械工場です
新築の空調の入った大きな建屋は、精密機械のオンパレードでした。
まだ未完成のところや、設備の移動をしたばかりということでしたが、
精密測定の機械室は充分に広く、20℃±0.5℃を保つクリーンルームです。

正に嘘のような本当の話でした。

くわしくは話しません。百聞は一見に如かずです。機会があったら、
皆さんにも見学して貰ったら良いなと思っています。

私はこのような先進の会社とお付き合いができたら良いなと考えています。

長々とした話しになりましたが、「井の中の蛙大海を知らず」といいますが、
私達を取り巻く危機的状況の中で、幸いにも今年は良い年となりました。
ぬるま湯につかった蛙にならぬように心して掛からなければという思いでお話しをさせてもらいました。

私の話しから世の中の一端でも垣間見ることができたら幸いです。
事実、私の生の体験からの話しですので、参考にしてほしいと思います。




又来年も皆さんと心ひとつに、最初に話した、
「社員の皆さんの、会社方針への理解と協力、大変な時でもゆるがない信頼と、仕事に対する意欲」を失うことなく、これからも引き続きよろしくお願いします。

終わりに、会社の忘年会には大勢参加していただき楽しく過ごさせてもらいました。
みどり会の会長、副会長はじめ役員の皆さんには、大変お世話になりました。
社員の皆さんの協力もあって、良いコミュニケーションの場になったと思います。
時間が足りなかったくらいでした。飲み過ぎた人もあったようですが、
何事もなく無事に終了できましたことは、役員の皆さんの気配り、
目配りが行き届いた結果だと思います。ありがとうございました。

来年も又頑張りましょう。

以上で終礼とします。皆さん良い年を迎えてください。



◆編集者より。平成24年(2012年)はこんな年でした。

【2012年重大ニュースランキング 朝日新聞編】

1.山中伸弥教授にノーベル医学生理学賞 
2.東京スカイツリー開業
3.金環日食、国内で25年ぶりに観測
4.尖閣諸島を国有化
5.中国で反日デモが激化
6.群馬・関越道でバス事故、7人死亡
7.ロンドン五輪・パラリンピックでメダル多数 
8.京都・祇園で車暴走、7人死亡
9.大津いじめ事件で中学を捜索 
10.オウム真理教元信者3人を逮捕、起訴


2012年12月28日