平成25年 創立記念朝礼

平成25年8月5日(月曜日)午前8時~ 於:厚生棟大会議室


創立記念朝礼(五十三周年)


━今改めて、創業時の精神、経営方針について━

皆さんお早うございます。
私達の会社、と云っても今は関連会社を入れると、3社に分かれているのですが、
その母体となる会社は、株式会社ベルクスです。
そのベルクスが創業したのは、今から53年前になります。

昭和35年の7月20日に初めて取引先からの集金をしたのは確実に覚えていますので、
実際の創業は5月21日~6月の初め頃になると思います。
この場合の創業とは、売上げ伝票を初めて書いた日を創業とする場合です。
実は更にその準備期間があります。

私が会社勤めを辞めて、取引先を探して、受注の約束をしてから、
何も無い中で、設備を整え、工場の場所を決め、
生産のための金型から細かな道具に至るまでの、最低の準備期間は、
少なく見積っても3ヵ月以上は掛かったはずです。
(私=創業者、佐藤務は昭和15年8月生まれ。この当時19才)

そうしますと、受注の契約をした日は2月の初め頃となります。
証拠となる書類も残っていないので、推定の話しですが、
ほぼ間違いはないと思います。

税務申告のための書類を整えるのも面倒なので、人見会計事務所という、
これも開業したての、税理士の人見先生にお願いして、経理を見てもらいました。

わずかな手持ちの資金を元手に、借金からスタートした創業から、
ほぼ2年で借金を返し、資産を評価すると100万円になっていました。
その時の借金とは、銀行からの借り入れではなく、設備を機械屋さんから借りて、
売上げから機械の代金を返済していったのです。

そこで、それまで個人経営の佐藤製作所から法人組織に変更し、
社名はトキワ工業有限会社として、資本金は100万円でした。
100万円は現物出資の形を取ったのです。

幸い世は高度経済成長時代となっていたので、仕事はどんどん増えていったのです。

しかし、いつの時代でも仕事は厳しく価格も安くないと受注できません。
当時のプレスワンパンチの加工賃は、安いもので4銭、高くとも、
1工程の単価は10銭ぐらいが相場でした。(1円=100銭)

そのような安い単価では、人と同じような事をやっていてはメシは食えません。
そこで創意工夫で生産性を上げ、土曜も日曜もなく、毎日定時は夜中の12時まで働き、残業手当もありません。信じられないでしょうが、本当なんです。

そうしないと機械の借金が返せないのです。個人経営の家内工業だからできたのです。

働き過ぎると死んでしまうので、第1と第3の日曜日だけは休みました。
だからと云って、仕事を苦痛に思ったことはありません。
むしろ楽しくて楽しくて仕方がありませんでした。
眠るのがもったいないくらいでした。

何故かと云えば、創意工夫次第で、生産性を上げれば、
利益を上げられる事がわかっていたからです。お客様も喜んでくれました。

何故なら、その仕事は安いので、どこもやる所がなかったからです。

このようなことが、私達の会社のポリシー(方針)である、
「技術指向」の原点なのです。



さていよいよ会社として、東京大森の法務局に登記の申請に行ったところ、
佐藤製作所としては受け付けてもらえません。
どうしてかといえば、同じ名前ですでに登記している会社があったからです。
違う名前で登記しろと云うのです。

そこで考えたのがトキワ工業という名前でした。
ときわ木というのは、常緑樹の総称で、冬の寒さにも夏の暑さにも負けず、
常に緑の葉をつけている姿に、会社もそのようでありたいという希いが込められてつけた社名なのです。

漢字で書けば、常緑と書いてときわとすることも出来るのですが、
字画が多く、手書きで書くと大変なので、カタカナのトキワとしました。

先見の明で、その後、社名を片仮名表記する企業が多くなりました。
そうして登記したのが、トキワ工業有限会社です。
設立登記は昭和37年2月14日でした。会社設立記念日はこの日になります。

会社創立記念日を8月1日にしていますが、どうしてかと云いますと、
会社は最低年に1回は決算をして、会社の成績表を作成することが会社法で義務付けられています。ルールも厳格に決まっていまして、勝手に自分の都合で、数字を変えて決算書を加減したりしますと、会社法で厳しく罰せられます。

決算書の主な書類は、貸借対照表と損益計算書ですが、
今はキャッシュフロー計算書の3つです。
会社法では計算書類といいまして、その他必要な書類を色々とつけて決算をします。
又、書類は会社が自由に作成しているのではなく、会計基準というルールに沿って作成しているので、ほかの会社の決算書とも比較できるようになっています。

大きな会社も、小さな会社も同じです。
但し、一部上場企業は、年4回の決算を義務づけられています。

私達の会社でも、公表はしませんが、月次試算表の中で月次決算を行っています。
ベルクスの総務・経理部門の、業務実施計画では、月次試算表の早期出力が第一の目標となっています。私を初めとする会社の取締役は、それを見て経営のカジ取りをして、会社の進む道を誤らないようにする、責任と義務があるのです。

話しを元に戻して、8月1日の創立記念日は、どうして決めたかといいますと、
会計事務所の都合で、年末から3月ぐらいまでは大変忙しい時期にあたるので、
比較的ヒマな夏場に決算をしたい、その方が、間違いもなく正確な決算書が作成できるという意見があって、8月決算となりました。

トキワ工業の第1期の決算は、2月14日から8月31日までの約半年の決算書となりました。そのような訳で、決算月の1日を創立記念日にしようと決めたのです。

都合の良いことに、決算間近になりますと、総務の努力もありまして、
ほぼ決算の見通しも立って、利益も確定ではありませんが見えてきます。
そこで利益配分を、決算前の時点で皆さんに配分できるという訳です。
今年も去年ほどではありませんが、週末に期待して下さい。
そのような訳で、創立記念日を決算月の頭に持ってきたという事は意義のあることなのです。

皆さん知っての通り、会社の大切な目標は色々とありますが、
その活動の結果は、冷厳な数字で現れます。
社名の由来の通り、夏の暑さにも負けず、冬の寒さにも負けず、
毎年利益配分が出来るよう頑張って下さい。

現在の社名ベルクスもときわ木の精神を引き継いでいます
音は違えど、意味は同じなのです。
創立30周年記念を期に、社名変更したのです。
詳しくは30周年記念誌を見て下さい。



先程、私達の会社のポリシーは「技術指向」であり、
その原点はどのようなものであったのかの話しをしましたが、
もうひとつ大事な「経営方針」についてお話ししたいと思います。

それは、個人経営から法人組織に改める時、仕事は何のためにするのか
その「目的」と「方法」について明確にし、
時代と共に色褪せることのない普遍の「価値観」と「永続性」を込めた企業理念なのです。

  責任ある仕事をし

  協調の精神をもって

  皆の幸せをつかむまで

  限りなき前進をしよう

この4行の言葉の中に、いささか抽象的ではありますが、
仕事とは、その「目的」と「方法」、「価値観」と「永続性」を表しているのです。

初めて会社組織として法人登記した時に、社名と共に工場の壁に掲げたのです。
私が20才の時に考えた言葉です。社名とも連動しています。
皆さんと共にいつまでも大切にして行きたいと思います。

価値観の多様化が進み、自由奔放な時代となってもベクトルを合わせることのできる経営方針なのです。
技術指向とセットになる創業の精神です。




さて、今年新社会人となられた新入社員の皆さん、着席のままで結構ですので、
手を上げて下さい。今年は縁あって6名の新入社員を受け入れました。
新社会人として、まだ5ヵ月足らずですが、職場に慣れてきた頃と思いますがどうですか。

今日は創立記念朝礼ということで、私からの朝礼を初めて聞かれると思いますが、
いつもの社長朝礼と違って、今日は会社の歴史の一端で、創業の頃の話しを通して、
創立記念日がどうして決まったのか、又社名の由来とその変遷、会社の成績表としての決算の話し、皆さんが心待ちにしている利益配分の話しと続きました。

更には私達の会社は技術指向の会社なのですが、
それがどのような過程を経て生まれてきたのか、その原点は創業の頃に遡るということ、そして経営方針とは、その心は、と続きましたが、もう少し話しをしたいと思います。

私も新入社員の皆さんを意識してお話しをしていますが、
先輩社員には、同じ話しにならないように、同じ話しでも退屈しないように、少し角度を変えてお話ししています。


どうですか?古くて新しい話しです。

新入社員も、先輩社員も、古参社員も、それぞれの立場で一生懸命に働いていると思います。働くという字は、ニンベンに動くと書きますが、漢字ではありません。これは日本で生まれた国字です。他にもたくさんあるのですが、一度調べてみると面白いですよ。


中国から入ってきた漢字も、日本で作り直され、今や中国でも日本から逆輸入しないと意味が通じないという言葉も沢山あるようです。

口の悪い人もいるもので、今年の新社会人の特徴は、一言で云えば「お掃除ロボット」だそうです。気にしないで下さいよ。ウチの会社の新入社員のことを云っているのではありません。一般論として、そのようなタイプが多いんだそうです。

どう云う事かと思ったら、云われた事には忠実に良く動くのだけれど、
問題にぶつかると立ち往生してカラ廻り、まるでスキ間に挟まったお掃除ロボットのようだと云うのです。

そのような事にならないコツを今日はお話しします。



「働く」という字は、「人が動く」と書きますが、その心は?(ナゾカケ風に)

人は機械と違って、お掃除ロボットではありません。
「働く」という言葉は、ハタ(端、傍)がラク(楽)になるようにという意味が込められています。「はたらく」という音に意味を引っ掛けています。

昔の人は知恵があります。
峠(とうげ)という字も、左に山を書いて、右側に上、下と書いて峠です。
つまり、坂道を登りつめた所という意味です。これも国字です。

つまりどういうことかと云うと、働くということは、あなたが動く事によって、周りの人が楽になるように、目くばり、気くばり、思いやりの心を持って仕事をすることが、働くということなのです。

例えば私達の会社では、それを云ってはいけない4つの禁句があります。
皆さん知っていますよね。知らない人や、忘れてしまった人もいるかと思いますので、この際復習します。

その言葉は、映画「男はつらいよ」の主人公、寅さんではないけれど、
「それを云ったらおしまいよ」と云うのがあります。
人が聞いたらシラけてしまうような言葉です。

いいですか?その禁句とは、
「出来ない」、「忙しい」、「後で」、「聞いてない」の4つです。

「出来ない」等と云ったら、聞いた人は、こいつはやる気がない、知恵がないと相手にされません。お客様にそんなことを云ったら注文はもらえません。
逆に出来ないと思うようなものこそ、やらせて下さい!と云えば、「ウン、なかなかやる気があるな。それでは一緒にやってみるか」と云う事になります。

「忙しい」と云ったら、相手にこの人は計画性がない、無能な人だと思われてしまいます。心そこに非ずですね。

後で」と云う前に、どうせやるなら「スグやる課」です。
役所の窓口に「すぐやる課」という看板を下げて、いわゆるお役所仕事を返上した市役所が、いつかニュースになった事がありました。今ならさしずめ、大阪市役所あたりで見られるのではないかと思います。どうせやるならスグやった方が信頼と感謝が生まれます。だから後でと云ってはいけません。

「聞いてない」これもダメです。情報化の時代に上司がそんな事を云ったら、この会社は報・連・相ができてない!ツンボサジキで無視されているなと思われたら、恥ずかしいでしょう。必要な情報はアンテナを高くしてキャッチする自らの努力も必要です。

さて最近この4つの禁句、出来ない、忙しい、聞いてない、後で、の他に1つ追加されて5つの禁句になったのを知っていますか?一部の人には話していますので、すでに皆さん、ご承知のことと思いますが、どうですか?

すぐ前にいます製造部のリーダーに聞いてみます。
何だったでしょうか?聞いてない等と云わないで下さい。

(○○リーダー)「言い訳無用です」。そうです、その通り。
「言い訳無用」です。良く答えてくれました。さすがリーダーです。

私達はプロなんですから、
例えば、出来なかったことを、アレコレ言い訳するのはやめましょう。
言い訳などするヒマがあったら、石にカジリついても約束した事を、ヤり抜く根性がなかったら物事は成功しません。

今後は、この5つの禁句を心に秘めて仕事に取り組んで下さい。



私達の会社は、53年前の創業の頃から、技術指向の会社なんだと話しました。
製造業の海外展開と、それにともなう空洞化現象は今に始まったことではありません。

私達は技術を武器として海外では難しいものを、出来ないものを国内で作る、
メイドインジャパンのものづくりを目標に努力しています。

今年の技能オリンピックで、日本は5つの金メダルを取りましたが、台湾、韓国、香港はそれ以上の金メダルを取っています。海外の技術レベルも、年々向上しています。

日本に追いつき追い越そうと、安い賃金で皆頑張っているのです。
メイドインジャパンの誇りは、技術と品質です。
目に見えないところにまで、丁寧に作り込む、心のゆきとどいたものづくりなのです。

私達が今反省しなければならないのは品質です。
4月、5月はクレームゼロでしたが、6月、7月で問題を起こしてしまいました。
本気になって問題を解決しなければ明日はありません。

お客様は厳しく、品質問題は無くて当たり前、1件でもクレームを起こせば新規発注はしない、今や1件でもクレームがあればワーストメーカーと云われ、2件以上のクレームは転注も考えると云っています。

問題解決に全社を挙げて取り組んで下さい。
ひとつひとつの対策を本気でやり切って、成果を出しましょう。

今後は出来なかった言い訳は通用しません
問題に直面したら、どうしたら良いかわからないようでは、お掃除ロボットと云われても仕方ありません。お掃除ロボットでは顧客流出不適合というクレームは無くなりません。

今日は、「働く」という言葉の意味を通して、働き方のコツについてお話ししましたが、理解してもらえたでしょうか。



創立記念の朝礼にしては、いささか厳しい話しになってしまいましたが、
創業から50年以上も経つと気が緩み、会社が危機的状況になっても気がつかないようでは、ゆで蛙になってしまいます。

私の話しは、これで終わりますが、この53年に感謝すると共に、明るい明日に向かって、皆さんと共に前進して参りたいと思います。よろしくお願い致します。

記録的な暑さの続く毎日ですが、今週いっぱい頑張れば、夏季休暇となります。
週末には皆さんの家族共々納涼祭を楽しみにしています。
企画、進行を務める、みどり会役員の方々には大変ですがよろしくお願いします。
ありがとうございます。


2013年08月05日