久しぶりですね。皆さんの前で私がお話しするのは5年振りです。
4年前の創立記念の時は、チャイナ発武漢ウイルスに対して国連の世界保健機関(WHO)が、このチャイナウイルスの世界的拡散に対して「緊急事態宣言」、いわゆるパンデミック宣言が出されました。そのため、世界中の人の交流が凍結となりました。三密(密閉・密集・密接)を避けるため、私達の会社でも60周年という大きな節目の年に皆で集まって祝うこともできずに、ホームページでの挨拶となりました。その意味でも、60周年は大きな節目の年だったと云えるかも知れません。
それから4年、まだ油断はできませんが今年令和6年、この感染症対応が5類に移行し、4年振りに通常通りの生活ができることになりました。
私も3年前のベルクス60期8月末をもって、第一線のベルクス、オークの役員を同時退任して、社長も現社長に引き継ぎました。現在は(株)プラッツの代表取締役として通称“会長”のまま残ってはいますが、第一線からの引退であることは間違いありません。
会社運営も改革と簡素化を進め、この全体朝礼も特別なことがない限り、新年とこの創立記念の2回となりました。但し、必要があれば何回でも良いと思います。そんな中、社長から私に「創立記念朝礼をやってほしい」と話がありました。辞退しようかなと思ったのですが、今年は辰年、私も7回目の年男84歳となります。良いお話ができるかどうか頑張ってみようかと思います。
◇能登の地震と事故
令和6年はベルクス64周年、オークは36期、プラッツは22期となります。今年は先に話した感染症対応も5類に移行し、やっと普段の生活に戻れると新年を家族で楽しんでいました。しかし、夕方になる頃ユラユラと地震があって、テレビを見ると能登半島地震※1が発生し、300名以上の犠牲者と火災です。また、翌日には震災の救援に向かう海上保安庁の中型機と日本航空の大型旅客機が衝突し、日航機に死者はなかったが、火だるまとなった日航機からの乗客、乗員379名の脱出は正に奇跡的なことでした。しかし、海上保安庁機の海上保安官5名が殉職するという痛ましい事故が起こってしまいました。亡くなった方々に対し、心から哀悼の意を表すると共に被災地の1日も早い復興を祈ります。
新年早々から次々と起こる天災や事故、痛ましい限りです。私たちの身辺にもいつ何が起きるかわかりません。他人事ではないですね。被災地には全国から支援の輪が広がっています。
◇働き方改革と生産性
加えて、今年の社会問題としては、働き方改革※1の一環としての残業規則、いわゆる2024年問題があります。経済にも少し明るさが見えてきた中、人口減少、少子高齢化、人手不足といわれる中、増々生産性を上げていかねばなりません。人手が足りないからと安易に外国人労働者を受け入れることは避けるべきです。それは実質的な移民政策に継がるからです。
ヨーロッパにおける移民、難民受け入れによる社会問題が深刻の度を増しているのは、海外ニュース等を見ても明らかです。日本もそうならないようにしなければなりません。それには生産効率を上げて、人手に頼らず知恵と工夫、技術の向上によって生産性を高めることです。
しかし、残念なことに先進7か国、G7の中で日本の生産性は最下位です。技術立国日本が何故なんでしょう。
ものづくりに丁寧な日本は必要以上に手を掛け過ぎているのでしょうか。そうだとすれば美術工芸品を除いて実用品の工業製品は工程を見直すべきです。その製品の機能が充足していれば、余分な工程は廃止すべきです。生産性を上げるための改善提案は社内のみならず、お客様にも広げて理解と協力を求めていきましょう。生産性が上がらないまま休日を増やし残業を減らすというようなことをすれば、経済は増々落ち込んでしまいます。人手が足りないからといって外国人労働者に頼っても問題は何も解決しません。むしろ大きな社会問題を引き起こすことは目に見えています。働き方改革どころか働き方改悪になってしまいます。
◇仕事は楽しく!
反社会的な物言いかも知れませんが、もっと働きましょうよ。生産性の向上という成果も上がっていないのに成果の先取りはいけません。成果を上げてから分配するのが正しいやり方です。
私達の会社が週休2日制になったのは今から34年前のことです。創立30周年記念の時でした。それまでは週1回日曜日だけの休みです。その上、残業は月に100時間ぐらいは当たり前でした。今のように機械化が進んでいなかったので、今より重労働でした。それでも仕事は楽しんでやっていました。飲み会になると仕事の成果や問題点などを上げて話は盛り上がり、ワイワイ、ガヤガヤです。私も仕事の話は大好きなんですが、たまに今日は仕事の話を抜きにして飲もうではないかと提案したりしますが、いつの間にかまた仕事の話になってしまいます。仕事は大変だけど楽しんでいたことは事実でした。
2024年問題は長時間労働は悪であるという前提に立って、働かない改革となっているように思います。
◇GDPと表彰台
今や経済大国日本も昔の話になってしまいました。GDP(国内総生産)においてもアメリカに次いで第2位だった日本も、中国に抜かれ、ドイツに抜かれ、間もなくインドにも抜かれ第5位になるのは時間の問題といわれます。オリンピックで云えば、永らく(40年以上)第2位の銀メダルだったのが、今や表彰台にも立てません。経済力がすべてとは思いませんが、残念なことです。第1位の金メダルは、人口3億の先進国アメリカは今のところビクともしていませんが、今や第2位の人口14億のチャイナがその地位を狙っているようです。グローバル化した経済は、技術も平準化されて格差もなくなりつつあります。そうなると、人件費の安さを武器に人口の多い国がGDPで有利であることは小学生の算数でも分かります。
ここで問題なのは、人口8000万のドイツに人口12500万の日本が抜かれて、現在4位となり表彰台にも上がれないのです。人口が日本の64%しかないドイツに負けて惜しくないですか。逆にいえば日本の人口1人当たりの生産性はドイツの64%以下であるということになります。同じものを作るのに、ドイツで100ヶ作るのに日本では60ヶしか作れないと同じことです。先程、先進7か国、G7の中で日本の生産性は最下位であることは、これを見ても明らかです。
◇円安と物価高
もうひとつの大きな問題としては、円安と物価高です。企業が努力して賃上げしても、すべてのものが値上がりしている現実の前では、実質的な賃金はマイナスとなってしまいます。一部大企業は好調のようですが、全体としてはあまり良くありません。しかしながら、株価の方は史上最高値を更新中です。日本の経済の将来が明るいという確たる見通しがあっての株高なら良いのですが、私はまたマネーゲームのバブル経済ではないかと心配です。心配ばかりしてもしようがないので、私は地元相良、牧之原出身の植田日銀総裁※3の手腕に期待しています。
◇会社の近況
さて、足元の会社近況について少しお話ししますと、原材料を初め、諸物価の高騰により、会社経営は大変厳しい状況にあります。営業的には、客先に対し値上げ交渉に努力していますが、たとえ満額認められたとしても、それは支払いにあてられ手元には残りませんから会社の利益にはなりません。見かけの売上げは上がるのですが、中味が少ないのです。
加えて産業構造の変化があり、私達の仕事もEV化による部品の減少、デジタル化による半導体不足、カーメーカーの不正や不祥事によるラインストップ等によって受注が安定しません。それに加えて最近は新規部品が大変少なく、昔のように試作品もありません。36年前、現ベルクスの技術部から、独立採算を目指し分社したオーク(株)も売上の低迷と大幅赤字となり、回復の見込みが立ちません。そこで、会社運営の改革と簡素化を進めるため、ベルクス技術部へ編入することとしました。オーク在籍の社員はすべてベルクス技術部への移籍となります。今後共、全社一丸となって、効率良く生産性を上げるべく、創意工夫改善の実を上げるべく努力してください。明るい話が出来なくて残念ですが、今日は創立64周年、過去にも多くの試練がありましたが、それを乗り越えて今日があります。いつでも夢や希望を失うことなく、小さなことでも良いからそれを実現するため努力することが大切です。
私が最近よく口にする言葉があります。「死ぬまで青春」生きている限り青春時代の心を持ち続けられたら幸せだなと思うからです。次は「食うために働く」ではなく「働くために食う」というんです。前向きでしょう。そして、夜になると今日一日充実した1日が過ごせたか反省をします。色々考えると眠れなくなる時もあります。そんな時は夜中に本を読むか、ウイスキーをストレートで1杯飲んでから眠ります。とにかく明るく元気で前向きに毎日を過ごしましょう。創業と同時にかかげた経営方針に従い、明日に向かって前進して行きましょう。
毎日暑い日が続いています。夏休みの前には、みどり会主催の納涼祭があります。社員の家族や友人も集まって楽しくやりましょう。みどり会役員の皆さんには大変お世話になりますが、よろしくお願いします。
創立64周年
お陰様で今日、創立64周年を迎えることができたのは、社員の皆さんを始めお客様、
関係するすべての皆様の協力があってのことと感謝いたします。
ありがとうございました。
今後共よろしくお願いします。
【注釈】
※1 能登半島地震 石川県能登地方では、令和2年(2020年)12月から地震活動が継続しており、令和6年1月1日16時10分頃の石川県能登地方の地震により、最大震度7を観測するなど能登半島を中心に強い揺れを観測しました。気象庁は、今回の地震及び令和2年12月以降の一連の地震活動について、陸域でマグニチュード7.0以上かつ最大震度5強以上の基準を満たしたことから、名称を「令和6年能登半島地震」と定めました。(気象庁|報道発表資料 (jma.go.jp) https://www.jma.go.jp/jma/press/2401/01b/202401011810_2.html より抜粋。参照2024.9.9)
※2 働き方改革 働く方々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置を講じるというもの。
「働き方改革」の実現に向けて-政省令告示・通達 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322_00001.html
【パンフレット】「働き方改革~一億総活躍社会の実現に向けて」より抜粋。参照2024.9.10)
※3 植田日銀総裁 32代日銀総裁、植田 和男(うえだ かずお)。任期は令和5年4月9日から令和10年4月8日。静岡県出身。(歴代総裁 : 日本銀行 Bank of Japan (boj.or.jp)https://www.boj.or.jp/about/outline/history/pre_gov/index.htm より抜粋。参照2024.9.9)
2024年08月05日