平成22年 終礼


平成22年終礼   

---創業50周年の年に想うーーー


平成22年12月28日(火曜日) 15:00~ 厚生棟2階大会議室にて


皆さん、この一年大変お疲れ様でした。
今年の年末年始の休みは、年間カレンダーの関係で、
12月30日から1月4日までの6日間となっていましたが、
明日の29日は一斉有給消化日となり、合計7日間の連続休暇となりました。
去年の10日と較べますと、3日少なくなっていますが、
それぞれに有意義な年末年始を過ごしていただきたいと思います。
恒例となっていますこの終礼も、私の考えも含めて皆さんと共に、
この一年を振り返ってみたいと思います。

今年はなんと言っても、創業50周年の年であり、
リーマンショックでどうなるかと心配しましたが、
昨年とは打って変わって大変良い業績となりました。

これも私達みんなの努力と協力の結果であると感謝します。ありがとうございました。去年は自粛となった、みどり会活動も今年は再開され、ささやかではありましたが、
春のレクリェーションも行われました。私自身はまだその気にはなれず、
自粛しましたが、参加した人の話を後で聞きましたら、
大変楽しく有意義であったと聞いて、良かったなと思いました。
その元気が勢いとなり、良い結果を出せたともいえます。

そして、迎えた8月の納涼祭、50周年記念の内々のパーティをあらさわ公園で社員の家族と共に祝いました。宴が終わる頃に思いがけず、私のために用意された、
50年物のワインのプレゼント、嬉しくて不覚にも涙が出てしまいました。
後で味わったその味は、決して忘れることはないでしょう。ありがとうございました。

そして、今月10日の忘年会、時を忘れて、
参加された95名の皆さんと共に楽しく語り合い酒を飲みました。
和やかなひとときはあっという間に過ぎ、私は、バスで帰りましたが、
余勢をかって、二次会三次会へと繰り出した社員も多かったようです。
きっと良いコミュニケーションが計られたことと思います。

みどり会の役員の方々には大変お世話になりました。
この場を借りてお礼申し上げます。こうした春、夏、冬の催し事の他に秋には、
TPM発表会、そして、その慰労会、これは職場ごとの、
またはいくつかの職場の皆さんが集い、一年間のPM活動の成果や、
苦労について話し合い、反省し、そして又、酒を酌み交わす、
大変意義のあることだと思います。




近頃思うに、「隣は何をする人ぞ」ではありませんが、
何事にも無関心、自己中心的で、
思いやりに欠けたようなところがあるのではないかと思います。

「小さな親切大きなお世話」下手すればプライバシー侵害で訴えられかねません。
そこで今度は、コンプライアンスとかで何をするにも法令遵守で、マニュアル通り。
取引先の銀行で、少しまとまったお金を下ろすにも、顔見知りであるにもかかわらず、窓口で本人確認の書類が必要だと言われてしまいます。
情けない世の中になったもんです。

そして、産業の空洞化ならぬ、心の空洞化現象が起きています。
ひとり暮らしで、話をする相手もいない人が、結構増えています。
若者から老人まで、病気で倒れたらどうするのでしょう。
場合によっては、死んでしまいます。孤独死です。
特に今年は、高齢者の所在不明の問題がありました。
全国では、何万人もいるそうです。

そして、相変わらず1年で3万人を超える自殺者、
そうしたことが私たちの身の回りで起きています。悲しいことですが現実なのです。
私たちは、そんなことを少しでも改善するために明るく、元気で、前向きに、先程の話しではないですが、良いコミュニケーションを通して、助け合いの精神を発揮できたら良いと思います。

歳末助け合いや、赤い羽根共同募金、
赤十字等に寄付をすれば済むというものでもないと思います。
困った人への金銭的な援助も大切かもしれませんが、
安易な援助は、本当の助けにはならないのです。

それよりも、将来のことを考え、足を地に着けて自助努力と独立自尊の精神で、
ひとつひとつの小さな努力の積み重ねが大切です。
それこそが私達の会社の年度テーマである「先見」にも通じることなのです。
心の空洞化現象で困っている人達が求めているのは、
精神的な援助なのではないかと思います。




すべての管理の基本となる、5S活動も、
TPM新5S「モノづくりは人」のテーマのもとに2001年3月に、新たに制定されました。そこにはそれまでと変わって「躾」が一番先になっています。
「躾」の定義するところは、「後先を思いやる心を養成し、マナーを身につけルールを守る」となっています。間もなく新5S制定10周年です。

12月に入りまして、初めてベルクスを訪問されたお客様から、
こんな評価をいただきました。その方は仕事の上で、
私達の業界にたくさんの取引先があります。訪問の次の日にメールがきました。
「こんなキレイなプレス屋さんを初めて見ました。プレス屋さんのイメージが変わりました。そして何より社員の皆さんの自然な挨拶に感動しました。もし迷惑でなかったらもう一度、私の会社の幹部社員を見学させていただきたいとの申し入れがありました。」もちろんただキレイなだけでなく、技術的な面も管理のレベルも含め評価された上でのことなのですが・・・。

そして3人の幹部社員と共に再度の訪問がありました。
その日は私と浦野部長で応対し、今度は答礼の訪問となりました。

その会社は藤枝にあります。スリッター屋さんです。大日商会さんと同業です。
その会社も大変きれいでユニークな会社でした。特にカラー鉄板の扱い量が多く、
キズやホコリは厳禁です。ですから随所に工夫をされています。

何よりタイムカードを見て、ビックリです。
どれを見ても、朝の出勤時間は、5時40分前後になっています。
今の時期ですと朝7時近くまで暗いと思います。
その会社の定時は朝の7時から夕方4時の8時間勤務体制なのです。
残業は悪であり、もし残業をしなければならないのなら、早出でカバーしなさい、
それでも納期に間に合わなければ、5時までの1時間だけ残業を認めましょう。
夜は家族団欒の時間です。ですからこの会社の社員の家庭では、
先程の話にありました「心の空洞化現象」などは無いに違いありません。

ほとんどの社員は朝の6時にはそろいます。そして何をするか、先ず掃除から。
社内外はもちろん、工業団地にある、その会社の周辺も全部だそうです。
通路もピカピカにです。その日はあいにく雨だったので、
ピカピカではなかったのですが。どうしてもトラックやリフトが通りますので、
通路がぬれていました。そして朝の7時前から稼働します。
掃除が終わって、仕事をしたら、15分単位で早出残業となります。

生産は現場のパソコンからダイレクトに生産管理室のコンピューターで各人別の生産性を管理しています。掃除の時間は早出残業に含まれません。
私達が工場に入ったのは、午後の2時頃でしたが、見学者用の中2階の通路の手摺りはピカピカでした。見下ろすと社員は皆キビキビと働いています。
その動作は無駄のない動きです。驚いたことに皆ヘルメットも帽子もつけていません。なぜなのか聞くのを忘れてしまいましたが、次の機会に聞いてみようと思います。
7時の始業時間には皆、工場と事務所の前の広場でラジオ体操と簡単な朝礼をしてから、本格的に生産体制に入るそうです。

見学が終わった帰りの車の中で浦野部長と話したのですが、
うちの会社は較べてみると、ゆったりと自由で、正に極楽トンボのような会社だなあ・・、という感想でした。
私達もそれなりに一所懸命、知恵を生かし工夫をし、自由闊達に仕事をしているつもりなのですが、見習うところも沢山あると感心しました。

その会社はなんと5Sを徹底的に指向している会社だったのです。
恐れ入谷の鬼子母神(おそれいりやのきしぼじん)です。
良かったですよ、自慢しないで。私は、ベルクス、オークの現場を案内しながら、
新5Sの看板を示して、このように5Sの定義を決めて、心がけているのですが、
看板が下がっているのは、まだできていない証拠です。と、謙遜したつもりでしたが、内心では5Sのレベルも最近は一ランク上がったなと思っていたのです。

来年3月には、新5S制定10周年です。
これを機会に、看板は心の中にプリントして、
看板を外しても5Sの定義通りに定着している会社になりたいと思いますが、
どうでしょうか。皆さんも一緒に考えてみてください。




さて話しは変わりますが、私達を取り巻く産業の環境は激変しています。

自動車産業も、今や中国が生産も販売も世界一となりました。
自動車産業の産みの親のヨーロッパも、育ての親のアメリカも、
そして日本も、近い将来、斜陽産業となるかもしれません。

何しろ人口が日本の12倍もあるのですから、市場としては、世界最大規模です。
そこへ世界中の自動車メーカーが進出しているのです。
生産コストも安いとなれば、現地生産をして輸入などということも考えられます。
そういう人口の多いこれからの国は、チャイナばかりではなく、インドやブラジル等もそうです。いわゆるBRICsと言われている国々です。

今のところ日本では、重要な部品や、技術的に難しいものは、国内で作って、
輸出していますが、これから先はわかりません。いつ技術移転が行われるか心配です。
何故ならアッセンブリメーカーと共に部品メーカーも、
そしてその部品メーカーに協力している私達のようなサプライヤーまで進出しているのですから、時間の問題でなのです。

現在は、国内向けは国内で生産し、環境対応型省エネのハイブリッド車等は、
日本メーカーが先行し、バッテリーだけで走る、EV車も市販されています。
これらの車は日本メーカーが先行し、国内で生産して海外に輸出していますが、
すでにヨーロッパのメーカーもハイブリッド車を作り、EVという、
電池を充電し、バッテリーだけで走る車も作っています。

これは大幅な部品点数の削減となり、コストも抑えることができますが、
まだ問題は走行距離が1回の充電で、100㎞から150㎞と少ないことと、
価格が高いことが難点です。

価格は量産することで解決しますが、走行距離も技術革新で解決したら、
EV車は秋葉原の家電量販店が一番安く買えるということにもなりかねません。

そして、今一番注目されているのが、プラグインハイブリッドです。
これだと夜、家庭用のコンセントから充電して、EV的走行を主として、
バッテリーが切れたら、エンジンで走ることができますから、走行距離の心配もなく、ハイブリッド車よりも燃費がよくなります。

そして、究極は何と言っても燃料電池車ですが、まだ先になります。
早くて3年から5年先と言われています。

このような認識に立って、先の事を考えると、
私達の会社も現状に甘んじてはいられません。

そこで次世代型産業へと、車以外の産業に、
技術を磨いて挑戦していかねばなりません。

それは何かと考えてみますと、今年は「はやぶさ」が7年掛けて、
地球から3億キロも離れた小惑星イトカワからサンプルリターンという
世界初の偉業を成し遂げて、帰還を果たしました。60億㎞の宇宙旅行でした。
大成功です。夢があります。

航空宇宙産業なんか良いな、防衛産業も大切だ、ロボット産業もあるぞ、
そして、何より環境産業も身近なテーマで、日本が世界をリードしています。

すでに私達の会社も、
家庭用燃料電池の開発にプレス部品で参入させてもらっています。
試作も終わって量産型も準備完了です。これからの製品で期待されます。

そして先日、
佐藤統括と二人で航空宇宙産業技術展が名古屋で開催されていましたので、早速行ってきました。

たまたま県内の企業で、航空機の部品を作っている、切削加工屋さんで、
S社の社長さんと知り合いになりました。
私は是非仲間に入れてもらいたいと頼んだところ、望む所です、
静岡県内企業で、共同受注しようと、10社程集まって、その役員会社であるとのこと、その会合で時々浜松へ来ています。
時間がとれたら、ベルクスさんへ立ち寄ります、ということにりました。
私は航空機産業に参入できる会社の資格があるかどうか見極めて下さいと、お願いしました。
更には、S社さんにも訪問したいということで、まだ実現していませんが、年が明けたら交流を深めるつもりです。

航空宇宙産業技術展へ出かける前々日に、
S社の社長さんへ電話で一緒に行きませんかとお誘いしたところ、
何と出展していますので、そちらで会いましょうとのことでした。

私達は早速初日の一番乗りで会場へ向かいました。

広い会場には色々な企業が所狭しと技術を競っていました。
難しそうなものばかりで、ちょっとお呼びでないなという感じで圧倒されましたが、
S社さんのコーナーを探して行ってみたら、
社長さんが担当さんと二人で応対をしていました。早速挨拶を交し、
展示品の説明をしてもらいましたが、複雑な形状の難削材で、少数個受注がほとんどとのことでした。全数データ付きで、サブミクロンの精度保証をして納入しなければならないそうです。

私は聞きました。この部品は1個いくらで受注しているのか、
差支えがなかったら教えてくださいと言ったら、
そうですね、この部品は1個約3万円ですとの答えです。
私は、えっ、そんなに安いのですか、それで採算が取れるのですかと聞いたら、
笑いながらギリギリですとの話しでした。

私は1個でも不良品が出たら赤字ですね、と言ったら、その通りです。
いやはや厳しい世界です。オークで作る金型の、部品展開をした1個当たりの価格の方がまだましではないかと思いました。もちろん金型は技術ノウハウの固まりですから、
当然だと考えますが、航空機部品も半端な技術ではありません。

次世代産業へ進出して、すぐに商売になるほど甘くはないことは覚悟の上なのですが、挑戦するには先ず現在の仕事でクレームをつけられるようでは、
挑戦する資格はありません。斜陽産業といわないまでも、
現在の仕事をプロフェショナルとしてこなしてワンランク上の品質と技術と管理力を身につけていかなければなりません。

そんな思いを強くして航空宇宙産業技術展を後にして帰ってきました。
次世代の夢に向かって皆さんと共に頑張っていきましょう。

聞くところによれば、私達の会社の大切な取引先であるNOK東海事業場も、
2年後には閉鎖となるそうです。仕事は海外ではなく、岡山のEKKへと移管となります。クレームでも出したら新幹線を使って片道5時間も掛かります。
今までのように片道車で10分とは訳が違います。心してゆきましょう。次世代へ向かって!




次世代と言えば、7月には昇格人事がありました。
8月の朝礼でリーダー管理者としての自覚について話したことは、
会社のホームページに載っています。繰り返し読んで理解を深めて下さい。

特に佐藤統括については、10月の株主総会において取締役となりました。
11月の総合朝礼では、皆さんの前で就任の挨拶をしました。
その理想の実現に向けて、本人の努力はもちろん、
社員の協力がなければ成り立ちません。
統括することの真の意味とは何か、これからも精進を重ねてもらいたいと思います。

幸せなことに、やる気のある優秀な社員が大勢います。
それは能力啓発考課表のコメント欄を見れば良くわかります。
私はそれを読むのを毎回楽しみにしています。
これは文書によるコミュニケーションの場なのです。
今後共、お互いそれを活かしていかなければなりません。
しかしながらあまり力み過ぎても実力は発揮できません。
肩の力を抜き、先を読んで着々とゆきましょう。

正に「その鳥を狙うな」です。今年は同じ映画を2度見てしまいました。
藤沢周平原作の「必死剣 鳥刺し」です。すでに映画は終わっていますので、
原作を本で読むか、リコーの創業者の市村清さんの講演テープでも入手して、
聞いてみたら良いと思います。「その鳥を狙うな」とは、
目標のみに集中して狙ってもダメ、廻りの環境を読んで、
狙った鳥の逃げる方向に鳥モチ竿を、そっと出すと、鳥の方から竿にかかる、
という話です。その原理を経営に活かして、
リコーという会社は成功したということです。
何事にも通じる話しとして、味わい深いと思います。

私事になりますが、今年は12月の初めに沖縄に行ってきました。
日本国内では、沖縄にだけ行っていなかったのですが、これで全国制覇です。
大変勉強になりました。百聞は一見にしかずです。
一口に感想を言えば、日本の国の縮図ですね。
いまだに占領下の日本を見たような気がしました。

政治の世界も、内憂外患、行き詰まった感じがします。
これをいかに打開するか、経済の世界も同じです。私達は、足元を固めて、チャンスを生かすしかありません。正(まさ)しく、「その鳥を狙うな」で行きましょう。


終礼での私からの話は、これで終わりますが、何の話をしたか、まとめてみます。
充分に意を尽くしたとはいえませんが、おおまかに5つの話をしました。

最初は、50周年とみどり会活動、
2つ目は、心の空洞化現象について、
3つ目は、TPM新5Sと、ユニークなお客様との交流、
4つ目は、自動車産業の現状と、次世代産業への挑戦、求められるものは1ランク上の品質と技術、それには何をしなければならないか、
最後に、次世代人事、その心構えとして「その鳥を狙うな」でした。

この1年の皆さんの努力と協力に重ねて感謝いたします。

これをもって平成22年の終礼とします。それぞれに良い年を迎えて下さい。




◆編集者より。平成22年(2010年)はこんな年でした。

共同通信社ニュース特集「2010年十大ニュース」より

国内ニュース
 【1位】尖閣諸島で中国漁船が巡視船に衝突。ビデオ流出騒ぎも
 【2位】参院選挙で民主党が大敗。ねじれ国会に
 【3位】厚労省元局長に無罪判決。特捜検事らを証拠偽造で逮捕
 【4位】普天間移設で日米合意。迷走の鳩山内閣は辞職し菅内閣誕生
 【5位】宮崎県で口蹄疫の被害が拡大。全国を震撼
 【6位】観測史上最高の猛暑。熱中症多発で死者も
 【7位】小惑星イトカワから「はやぶさ」が帰還
 【8位】所在不明の高齢者が続々と判明。「無縁社会」も深刻に
 【9位】ノーベル化学賞に根岸英一、鈴木章両氏
【10位】15年ぶりの円高水準。政府は市場介入

国際ニュース
 【1位】北朝鮮の韓国砲撃などで朝鮮半島緊迫
 【2位】チリ鉱山落盤事故。69日ぶり作業員33人全員を救助
 【3位】北朝鮮の指導者金正日総書記の後継者に三男、金正恩氏
 【4位】中国の国内総生産(GDP)、日本を抜き世界2位の経済大国に
 【5位】欧州の財政危機。ギリシャからアイルランドに波及
 【6位】中国の民主活動家、劉暁波氏にノーベル平和賞
 【7位】米中間選挙で与党、民主党が敗北
 【8位】通貨安競争が激化。先進国と新興国が対立
 【9位】メキシコ湾の油井事故で原油が大量流出
【10位】中国の次期最高指導者に習近平氏


2010年12月31日