平成23年8月 創立記念朝礼



創立記念朝礼

2011年8月1日(月) 於:大会議室

今日8月1日は、創業以来51年目の創立記念日にあたります。

昨年の8月は創立50周年の節目にあたり、ささやかではありましたが、
お祝いをすることができました。リーマンショックというアメリカ発の経済破綻を皆で何とか乗り切りつつあった50周年でした。




ところが一難去って又一難。今度は今年3月11日の東日本大震災が起こって、
何とマグニチュード9.0という、巨大地震でした。そして大津波です。

テレビニュースでその生々しい現実を見て、背筋が寒くなりました。
家々が、車が、大きな船さえ陸上へ流され、きれいな田畑もハウスも、
黒い波に呑み込まれてゆく様は、現実のものとは思えませんでした。
大自然の力の前には、人間の営みの何と脆く儚いものか、沿岸部の街は、
あっというまに瓦礫の山に変わってしまいました。

そして、石油コンビナートの爆発炎上、
岸壁に整然と並んだ輸出のための車の列でしょうか、
そこにも津波は容赦なく押し寄せて、燃えながら流されてゆく車の映像は、
正に地獄のような有様でした。

死者、行方不明者合わせて2万人を超える犠牲者。
未だに10万人を超える人々が避難所暮らしの生活をしています。

犠牲となられた方々のご冥福をお祈りすると共に
、一日も早い復興を願わずにはいられません。

一番問題なのは、東京電力福島第1原発事故です。
元々の原因は天災によるものだとしても、あまりに脆い安全神話の崩壊に、
ただ呆然とするばかりです。

次々と水素爆発を起こす原子炉建屋。そしてメルトダウン。
ウラン燃料棒が冷却不能となって、空焚き状態となり、
2,700度から2,800度の高温で、耐熱鋼でできた厚さ16㎝の圧力容器を溶かし、
地面に突き抜けてしまったのです。この状態をメルトスルーと云います。
史上最悪のレベル7の原発事故を引き起こしてしまいました。

その結果は何より恐い放射能汚染です。すでに毒性を持つ数々の放射線が、
専門家や技術者、東電の作業員等の、必死の努力も空しく、
事故以来140日も経つ現在、収束の方向へ向かっていると云っていますが、
ほぼ垂れ流し状態となっています。

報道されていませんが、3号機はプルサーマル発電中でした。
つまりMOX燃料という、ウランに再生燃料であるプルトニウムを混入した燃料棒を使用しています。事故によりこれから発生する放射能汚染は、
ヨウ素やセシウム等と共に、プルトニウム238及び239という強烈な放射線が出ます。

毒性の半減期(*1)が、数日から、数か月というヨウ素やセシウム等と違い、
毒性の強いプルトニウムは15マイクログラム(*2)で死亡するというものです。
更にこれの半減期は、2万4千年といわれています。
こういうものが把握されているのかいないのか、報道を注意して見ていても、
未だに発表されていません。隠しているのではないかと疑いたくなります。

私はこれらの知識を事故以来、5、6冊の本を買って読みました。
反原発の本が中心ですが、原発賛成推進派の本も読んでいます。

その上で云うのですが、私は考えが変わりました。反原発になりました。
これまで私は、原発は必要悪、国を始め、専門家が安全だと云うのなら、
私のような素人が反対してもしようがない。必要な電力を賄う為なら仕方がない、
是非共安全に運転をして下さい、という立場でした。
大多数の人が同じ考えだったのではないかと思います。

しかしながら、今回の事故の現実の前に、深く考えさせられました。
安全神話など嘘であり、まやかしであった。騙されたという思いが強くなりました。
このようなことは、信じていただけに残念でなりません。
科学立国日本の恥です。言い訳は通用しません。

私は日本人だから思うのです。原子力の平和利用等と綺麗事を云っても駄目です。
本当は人間がコントロールできない悪魔のエネルギーなのです。
福島の現実を見れば、そのように思われます。決して臆病になった訳ではありません。

原子力発電によって発生する、高レベル放射性廃棄物は、
地球上行くあてもない原発ゴミとなって、原子力発電所敷地内に溜め込まれています。大変危険なゴミ屋敷なのです。トイレのないマンション等とも云われていますが、
生理現象と同じですから、原発を稼働させればゴミが出ます。
トイレが無ければ糞の山です。

原子力発電所の見学に行けば、
外見は綺麗に見えても本当は危険なゴミ屋敷だったのです。5Sどころではありません。

原発に賛成するのならば、
先ずこの危険極まりない原発ゴミ問題を片付けてから物を云えといいたいのです。

世界中の原発が同じ状態なのです。そんな事は初めから解かっていたのに、
目先の利益に目の色を変えて、後は野となれ山となれ、その内何とかなるよ、
ケセラセラなんです。原発ゴミは糞と違って、何とかなるような代物ではないのです。

福島の事故は、科学技術信奉論の崩壊なのです。

西洋文明の基盤には、自然を科学技術で征服するという考えがありますが、
それこそ神を恐れぬ傲慢な態度だと私達日本人は考えます。
何故なら日本人は自然を敬う民族だからです。
山でも川でも、大きな木も岩も、
皆自然にあるものは神として敬う心を持った民族なのです。

原発を止めると電力が不足するとか何とか云っていますが、
私はそんな事はないと思います。この夏場にみんなの節電の努力もありますが、
新聞を見ると、電気予報などという記事が毎日出ていますが、
そのグラフを見れば供給能力に対して、ピーク電力は80%代となっています。
まだ10%以上余力を残しています。

日本中で工夫すれば、それこそ何とかなる、大丈夫だと思います。
性懲りもなくただ原発を動かしたい人達が、
電気がなくなると大変だ、大変だと騒いでいるような気がします。
100年前には電気が無かったのです。電気に頼る生活を見直す事も必要です。

便利な生活も大事ですが、命の方がもっと大事です。
科学は万能ではありません。便利過ぎる生活は、人間の能力を退化させます。

昔は電気が無くても、心豊かな暮らしをしていました。
便利な生活にはコストが掛かります。コストはお金です。
そのお金を稼ぐためには、尻に火がついたように、あくせく働かなければなりません。

最近の新聞のコラム記事に書いてありましたが、人間が空気を発見したのは、
地動説のコペルニクスの弟子が真空の発見による副産物として空気と云うものを発見したといいますから、たかだか500年前のことです。
それまで人間、空気が無ければ5分も生きていられないのに、
その存在すら気がついていなかったのです。

今や電気も同じようなもので、電気があるのがあたり前で、電気が無くなると人間、
手も足もでないというくらい電気にドップリつかる生活になりました。
空気と違って、電気が無くても生きてゆけるのに、
電気がないと生きてゆけない様な文明社会となりました。

そして、際限なく電気が必要となり、とうとう悪魔のエネルギー、
原子力発電にたどりついたのです。

そうは云っても、今更後戻りは出来ません。
原発はやめるべきですが日本だけがやめても、問題は解決しません。
ドイツやイタリア、スイスなどは、やめる事になりましたが、
原発大国フランスはやめません。

国境沿いに並んだフランスの原発の電気を買うのです。
これではやめた事にはなりません。「頭隠して尻隠さず」です。
子供のかくれんぼです。

それではどうしたら良いのか、一部の良識ある人はもう気がついているのですが、
まだ声を大にして云っていません。

それは、このような大事故を起こした日本国が取るべき道はただ一つ

唯一の被爆国として、又、原水爆実験の被害も受け、原子力の平和利用にも失敗して、又々被曝の目に見えない恐怖に曝されている日本だから、説得力があるのです。

それは、「原子力発電の禁止条約」を提案し、国連の場に訴える事です。
それこそグローバル時代にふさわしい議題だと思います。

「万機公論に決すべし」の世界版です。一国だけの問題では済まないのですから。

戦前のことですが、1920年に国際連合の前身である、国際連盟が発足しました。
当時の日本は、日清、日露の戦争に勝った世界の一等国ですから、
真っ先に加盟しました。その後、国際会議において提案した、
「人種差別撤廃条令」は、賛成多数で可決されるはずでしたが、
当時の議長国アメリカの反対で流れてしまいました。

その他の問題もあって、日本は国際連盟を脱退して、
大東亜戦争に突入していったのですが、この戦争に敗れたとはいえ、
「人種差別撤廃」の正義は、今日世界の常識となっています。

最近ある会合で原発反対の人が、日本中原発だらけで危なくてしようがないから逃げると云うんです。私はどこへ逃げるのか聞いてみたら、日本に10社ある電力会社の内、
原発のないのは沖縄電力だけだから、沖縄へ逃げるというんです。
私は笑って云いました。日本国内では一番近い原発は鹿児島の川内原子力発電所だけれど、それより近いところに原発は5つも6つもありますよ。
だから逃げても駄目、と云ったらガッカリしていました。

そうなんです。台湾はすぐそばです。
朝鮮半島から大陸の海沿いに原発は1ダースもあるのです。
もしチャイナや朝鮮の粗悪な原発が事故を起こしたら、
日本中に目に見えない黄砂のような放射能の雨が降るでしょう。

国際連合に原子力発電禁止を提議しても直ちにやめる事にはならないと、
思いますが、この問題を真剣に討議することで、これ以上の原発は作らないとか、
原発の安全基準のハードルを上げるとか、事故を起こした時の他国に対する賠償とか、前進は必ずあると思います。

私はやみくもに原発反対と云っているのではありません。
もし原発が本当に必要であるなら、あらゆる事を想定して、絶対安全な原発技術を確立してから、そして、高レベル放射性廃棄物等の問題も解決し、さあ、矢でも鉄砲でも持ってこい、と云えるようになったら、どんどん作れば良いと思います。

しかしきっと採算が取れないのではと考えます。
それでも本当に必要なら作るべきです。
そんなことは日本人にしか出来ないと思います。

とにかく電気が足りないと云うなら、節電です。
電気に頼らない生活を工夫し、改善することです。笑われるかもしれませんが、
私も節電対策を実行しています。何をしているかと云うと、
夏場はビールが旨いですよね。私の家では缶ビールをやめて瓶ビールに変えました。
アルミは電気の塊りですから、缶は使い捨てですが瓶は詰め替えがききます。
その他色々心掛けていますが、乞うご期待です。
明るい気持ちで節電といきたいですね。

暗くなりがちな世の中ですが、あの大地震でも東北新幹線は脱線しませんでした。
人が立っていられない激しい揺れの中、
時速200㎞以上のスピードで走行中の新幹線が、
上下合わせて27本もあったのですが、一両も脱線事故がありませんでした。

又、建設中の東京スカイツリーも634mの高さで最上部は前後左右に6mも揺れたそうですが、工事中のクレーンも含め、何事もありませんでした。
作業員は必死にしがみついていたそうです。

333mの東京タワーは、塔の先端が少し曲がったようですが、何とか無事でした。

それにしても、この未曽有の国難の中、
10万を超える自衛隊の献身的な救援活動にはただ頭が下がるばかりです。
アメリカの軍隊も頼もしく空母まで出してのトモダチ作戦、
その他多くの人々の救援活動の中で一際光るものがありました。

自衛隊も軍隊です。軍隊の特徴は、何といっても自己完結なんです。
誰の世話にもならず、自分達ですべてを賄う事が出来るのです。
ですから、受ける側は何の心配もせずに、すべてを安心して任せる事ができます。

それに引き換え、私達の生活は何と人まかせで成り立っているか、反省しなければと思います。今の生活から1%でも良いから、自己完結が出来るように努力しなければなりません。会社としてもこれから防災用品の備蓄、管理に力を入れて行きたいと思います。





さて、次は会社の近況について少し話したいと思います。
震災による生産計画の狂いと休日変更に対する対応と大変な中、
なんとか今期は、前期の半分程度の利益は確保できる見通しです。

これも皆さんの協力と努力の結果であり、感謝致します。

年一回7月の昇給も出来ました。
何より準社員から正社員への昇格人事によって、
正社員となられた9名の方々にはお祝い申し上げます。
これで正社員の比率は85%を超えました。会社、社員共責任が重くなりました。
運命共同体として、共に頑張ってまいりましょう。

先日私は、ある会合で講演を聞いてきました。「社員を生かすコーチング」という演題でした。コーチ、又はコーチング等という言葉は、スポーツの世界での用語だと思っていたのですが、経営にも通じる話しという事なので、興味を持って聞いてきました。

野球の世界では、管理野球等とも云われ、ノーアウト満塁、次の打者は、コーチや監督の指示により、送りバントでゆくのか、又は違う作戦で行くのか、選手は指示を待ちますが、サッカーやラグビー、フットボール等は、そんな指示を受けているヒマはありません。

事前に充分な戦略を立てる事はもちろん、血の出るような練習を重ね、
臨機応変の動きを、頭ではなく体に覚えさせなくては勝てません。

これからの経営も同じことで、目標に向けて自ら考え、自ら決めた事は即実行に移す。指示待ち人間では駄目であり、更なる厳しい時代に会社として勝ち残るためには、
サッカー選手のような社員を育てる必要がある、という話でした。

その為には、普段から対話を通じて、会社の方針、
部門の方針を理解しておかなれけばならないということです。

女子ワールドサッカーにおける、なでしこジャパンの優勝は、正に感動的でした。
コーチングの話しを聞いた後での決勝戦だけに、講演での内容と、
実際のプレーに納得した試合でした。

そこで早速、我社に当てはめて考えてみました。
社員の皆さんに対する私からのお願いという話しですので、聞いて下さい。
納得したら、お互いのために即実行といきたいものです。
これは思いつきの話しではありません。以前から気になっていたことなのです。

先程年一回の昇給の話しをしましたが、その際、賞与や昇給の参考資料として、
年2回の能力啓発考課表による、自己評価をしてもらっています。
更には上司の一次評価、二次評価となるのですが、どうもその評価点が低いのです。
平均では30点代の前半くらいで留まっていて進歩がないのです。
満点で50点ですから、100点満点に換算しますと、60点代というところなのです。

それに引き換え、部門における業務実施計画やTPM活動は、
半年毎の進捗チェックで評価していますが、
こちらの方は全部署共90点代になっていて、立派な成果を上げています。

能力啓発考課表には2種類あって、社員用と管理監督者用の二つです。
どちらも基本的なことができているかどうか、五段階評価となっています。
難しいことは何もありません。それなのに点が低いのは、どうしてでしょう。
遠慮深いのか、理想が高いのか、どちらにしても基本プレーなので、
レべリングを図り公正な評価の基に、少なくとも40点前後にまで高めてほしいのです。100点満点に直して80点以上が目標です。

普段から対話のツールとして活用するための創意と工夫を加えてよろしくお願いします。




昨年の50周年記念の話しの中で、次の50周年へ向けての新たな出発の日としようとも云いました。

その初年度である51年目に大変なことが起こりました。
経済破綻寸前の借金大国日本に、震災による復興費負担に原発被害の賠償金は、
莫大な金額になるでしょう。

政府はそれを増税によって賄うと云っています。そして円高の追い打ちです。
なぜなんでしょう?それは先進国の中では日本はまだ良い方だと思われているからではないでしょうか。私達は円高で苦しむ輸出産業にも属しています。
アメリカもヨーロッパも大不況です。
今元気なのは、後進国や途上国、特に無法者の国、チャイナぐらいでしょうか。

アメリカ発のグローバリズムなどという、貪欲な資本主義にうつつを抜かして、
自分の利益ばかり考える。利己主義に走る結果が、ホリエモンを生み、
リーマンショックや、現在のユーロ危機にまで繋がっているのです。

これからは日本発の新しい価値観を生み出して、個人より社会のために、人のために、そして便利すぎる生活から、本当の豊かさとは何かを考え、誰かを頼ることなく、自助の精神で、新しい産業を創り出していかなければならない時代がきています。

この道一筋50年の私達の技術が、
そのような方向に活かされるべく舵を切って行きたいと考えています。

社員の皆さんには、これからもますます研鑽を重ね、力を合わせて、
どんな不況にも勝ち進める会社となるように共々頑張って参りたく、
よろしくお願い致します。


参考

*1・・半減期
放射性物質が放出する放射線の強さが、半分に減少するのに要する時間。
秒単位から数十億年まで、放射性物質はそれぞれ固有の半減期を持っている。

*2・・マイクログラム
μ(マイクロ)は百万分の一を表す。1マイクログラムは1グラムの百万分の一。
1ミリグラムの千分の一の量。


2011年08月01日